@Just in Time(56年『Bells Are Ringing』)
意表を突くリズム・パターンを用いてメロディーを歌わせるこのトリオの、そしてアレンジャー=クリスチャン・ジェイコブの真骨頂がこの1曲目から炸裂している。この曲をこういう風に料理するのか、とも思ったオープナーだ。アドリブ部分で8ビートに料理するところなど、彼のピアニスト&アレンジャーとしての魅力もタップリ味わえる。
AIt's You or No One(48年『Romance On The High Seas』)
これまた一瞬<いつか王子様が>かと思わせる出だし。その流れからテーマへなだれ込むようにしてアドリブを繰り広げるクリスチャン。涌き出でる泉のようなアドリブ・コーラスは必聴。流麗なテンション・コードを繰り出すあたりは思わず聞き耳を立ててしまうほど。5分という演奏時間がとても短く感じられる密度の濃いプレイだ。
BGuess I'll Hang My Tears Out to Dry(44年『Glad To See You』)
本作で2曲参加している歌姫ティアニー・サットンのヴォーカルをフィーチャーする1曲目。クリスチャンのピアノのみをバックにしっとりと歌うティアニーの切々と綴る女心にジーンと来る。それにしても彼女の歌には、若手の女性にはない説得力がある。クリスチャンの歌伴の旨さここにありという1曲。作詞はサミー・カーン。
CNever Never Land(54年『Peter Pan』)
これはクリスチャンのアドリブ・ショーケース。イントロから8ビート風味のテーマ、そして魅力タップリのアドリブ(4ビート)が連続する。ファニーなテーマながら、これまたこの曲をこう弾くのか!という驚きが。それにしてもクリスチャンのタッチの芳醇な味わいは素晴らしいものがある。
DLydia's Crush(クリスチャン・オリジナル)
この曲は、ビック・ルイスの『West Coast Jazz』(Candid)でも取り上げられていたクリスチャンの名曲バラード。そのまま映画音楽に使われてもおかしくないほどの哀愁を帯びたテーマが美しい。上記作品と同じスコアを使っている。ここでのクリスチャンのソロ・ピアノは、まさにマスターピース。
EPiece One(クリスチャン・オリジナル)
アメリカ生まれのジャズマンには書けないようなテーマを持った曲。欧州ジャズがお好きな方は、この1曲でノックアウトされるに違いない。ベース、ドラムスとのインタープリテーションも秀逸で、このトリオ・メンバーの阿吽の呼吸が聴き手の我々にも伝わってくる。トレイのベース・ソロをフィーチャー。
FPiece Two(クリスチャン・オリジナル)
6曲目の変奏曲ともいえる作品。しっとりと歌うクリスチャンのピアノにウットリしてしまう。彼のオリジナルを聴くとフランス生まれなんだよなぁ、ということが良く分かる。難しい不定形なテーマを難なくこなしているベース、ドラムスの二人にも脱帽。5分近いトラックだが、あっという間に・・・。
GPiece Three(クリスチャン・オリジナル)
ミディアム・アップのテンポで演奏されるテーマは、演奏するにはかなりテクニックが必要だが、ここでも三者は難なくこなしている。クリスチャンのグイグイと弾き込むアドリブが心地よい。ドラムスのレイ・ブリンカーを短くフィーチャー。彼がとてもヴァーサタイルなスタイリストだということが良く分かる。
HPeople(64年『Funny Girl』)
ここでの優美さに、ジョージ・シアリングの演奏を思い出してしまった。しっとりと歌うバラード・プレイが聴き所だが、インテンポしてスイングしていくアドリブ・ラインも美しい。トレイの弾くベース・ラインの響き、浮遊感覚で叩くレイのドラムスがまさに三位一体となった名曲名演。
IAs Long As There's Music(44年『Step Lively』)
クリスチャンにこの手の曲を弾かせたら鬼に金棒のような気がする。しっとりと歌い上げる甘美なまでのピアノの一音一音が美しい。原曲の歌詞を歌いながら演奏しているとしか思えないほどのタッチである。本作の中でも美しさは白眉。ビル・エヴァンスが弾いているように思えてならない1曲。
JI Fall in Love Too Easily(45年『Anchors Aweigh』)
テーマの最初の8小節を歌われただけで「参りました」。凄い説得力である。ティアニー・サットンという歌手はもっと注目されていい。それにしても歌が終わった後のクリスチャンのソロは本当に美しい。歌心ここにありを実証している名演。ティアニーに恋に落ちてしまいそうではある。作詞はサミー・カーン。
KTime After Time(47年『It Happened In Brooklyn』)
ミディアム・アップのテンポでのテーマ・アレンジが素晴らしい。トレイのベースをフィーチャーした1曲。彼はウッド・ベースも上手いが、フレーズ作りにエレクトリック・ベースのテクニックを加えている新感覚なベーシストのように思える。それにしてもクリスチャンのソロに釘付けだ。
LThe Party's Over(56年『Bells Are Ringing』)
終曲に相応しいタイトルの曲をクリスチャンは選曲してきた。ソロ・ピアノでプレイされるが、このセンスの良さこそ、ティアニーと一緒に演ってきた成果が現れている。3分の短い演奏だが、思わず歌が入ってきそうな瞬間がある。もっと聴いていたいと思わせる名演でパーティーの幕が閉じられる。